音楽療法の力で未病改善へ― 国際未病医療センターで臨床研究を開始
医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院 国際未病医療センター(神奈川県鎌倉市)では、2025年6月25日より、音楽療法を活用した臨床研究「音楽療法の認知機能およびオーラルフレイルに及ぼす影響に関するパイロット研究」を開始いたしました。
本研究は、神奈川県が推進する「ME-BYO(未病)」※の取り組みに基づき、科学的な視点から未病改善を図ることを目的に実施されるもので、音楽療法が認知機能の維持や口腔機能(オーラルフレイル)の改善に与える効果に着目しています。
※ME-BYO(未病)とは、健康と病気の間を連続的に変化する心身の状態を表す言葉で、神奈川県が提唱しています。未病の状態を「見える化」し、未病改善を促すことで、健康寿命の延伸を目指すものです。

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背景
認知症は10~20年という長い年月をかけて進行することが多く、初期段階ではMCI(軽度認知障害)と呼ばれる症状が現れるといわれています。このMCIの段階では、生活習慣の見直しや適切な介入により、健常な状態に戻る可能性があることが知られています。
音楽療法は、感情や記憶に働きかける手法として注目されており、今回の研究では非薬物的なアプローチによる健康年齢の延伸を期待して“未病改善”を目指します。
本研究は、高度急性期医療を担う病院が、豊富な医療資源と多職種の連携体制を活かしつつ、院長主導のもと未病分野に積極的に取り組むという点においても、非常に大きな意義を有しています。
こうした取り組みは、医療機関が「治す医療」にとどまらず、「防ぐ医療」「支える医療」にも主体的に関わっていくという、これからの医療の方向性を具現化する試みです。
先進的な急性期病院が未病領域の実証研究に取り組むことは、単なる臨床研究を超えて、医療・介護・地域をつなぐ持続可能なヘルスケアモデルの創出に寄与し、今後の医療のあり方に一石を投じるものといえるでしょう。
検証内容
本研究では、音楽療法が高齢者の認知機能およびオーラルフレイル(口腔機能の衰え)に与える影響を検証します。
対象者に対して定期的に音楽療法を実施し、実施前後で認知機能テストや口腔機能の測定などを行うことで、心身への効果や変化を科学的に評価します。
- 実施期間(例:6月〜9月の3か月間)
- 頻度(例:週1回・45分)
- セッション内容(例:合唱、簡易打楽器、懐メロなど)
- 研究評価項目(例:MMSEスコア、血液検査、舌圧測定、血液検査、発声・筆圧解析など)
実施日
2025年6月25日(水)より開始され、一定期間にわたって継続的に音楽療法のセッションが実施されます。
本研究はパイロット段階に位置付けられており、今後の本格的な展開を見据えた第一歩となります。
研究対象
本研究には、徳洲会グループが運営する鎌倉市・逗子市・横浜市周辺の介護老人福祉施設6施設から、協力を得て参加者を募ります。
それぞれの施設で生活している高齢者を対象とし、集団形式で音楽療法プログラムを提供します。
- 参加者年齢年齢78~99歳
- 参加条件(例:週1回、湘南鎌倉総合病院で開催される音楽療法に継続的に参加できる方、がん治療中や人工透析を受けられている方を除く)
指導体制
音楽療法の指導は、昭和音楽大学より、日本音楽療法学会の認定音楽療法士を招聘し、専門的知見に基づいたセッションを実施します。
対象者の心身の状態に応じて、リズム体操、歌唱、楽器演奏などを取り入れながら、参加型で楽しく継続できるプログラム構成としています。
研究体制
本研究は、湘南鎌倉総合病院、横浜国立大学、神奈川県が連携して実施します。
湘南鎌倉総合病院が研究の設計を行い、横浜国立大学と神奈川県は研究の評価の一部を実施。産官学が連携し、未病領域における新たなエビデンス創出を目指します。
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湘南鎌倉総合病院 広報室
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