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腎臓内科ブログ

<Vo.22>【豊かな人生は好奇心と世にものを問う姿勢から】

腎臓内科
2012.10.22

私がこの病院にお世話になったのは1999年である。それまでの多くの時間は動物実験に割いていたと言っても過言ではない。テキサス大学の病理では代償性腎肥大と糸球体硬化を、成長因子を絡めた実験をやっていた。実は糸球体障害より先に尿細管肥大と間質の障害が起こっていて、その元凶は「work load」であるということがわかった。ここに、カロリー制限を行うとIGF-Iを介してこれらが改善する。働き過ぎはよくないということである。その後、動物実験はぴたりとやめ臨床医学から何が浮かび上がってくるかを検討してきた。結果は正直である。毎日飽きるほど臨床をやっていると、既に「肌で感じる」とおりの事が多く、新しいことがそう多くある訳ではない。あくまでも科学的に検証しているにすぎない。ただ、「それってホント」というような発見もいくつもあった。

ある日透析患者のご家族から余りにもボケ症状が強くなってきたので診てほしいと頼まれ、MRIを撮ったらマンガン鉱山で働く人に見られるとされる特異な像があり「なぜマンガン?」と目が点になった。その透析患者が元気になろうとしてたくさんのサプリを飲んでいた。これだと思った。が、サプリにマンガンが入っているものは無い。メーカーに聞いても答はNOである。意地になって都内の食品化学分析センターに高いお金を払ってまでして調べてもらったら、なんとクロレラにマンガンが入っていたのである。キレート剤を毎回注射したらみるみる元気になって画像まできれいになった(AJKD 46:749,2005 Ohtake, et al.)。まるで手品のようだ。

われわれのチームのモットーは「世にものを問う姿勢」を持ちながら臨床をやるということである。臨床も研究も両者同等に大切である。そういえば、私は大阪の出身であり中学のバレー部で毎日苦しい練習を強いられていた時、「憎き」しかし「愛すべき」指導者がいつも言っていた。勉強とバレー「文武両道だ」と。今となってはこの先生が最初の恩師であったと言える。我々の腎臓チームは皆でよく遊びそれに鎌倉中のグルメもしている。私はクラシック音楽大好き人間でクラリネットも楽しんでいた。地元で私が理事長をしている「NPO法人癒しの医療を考える会」主催の音楽会では、毎回作曲家と病について話をしている。モーツアルトは溶連菌感染後CKD心不全をたどったと考えられる(拙著 モーツアルトやベートーヴェンその音楽と病 医薬ジャーナル社刊)。今ならもっと長生きできた事は言うまでもない。

透析患者の心血管障害は保存期の早い時期からから出現している。目に見えないだけである。目に見えないものを見るのが優秀な内科医の役割である。人には見えなくとも、自分が一番先に見ることができるのはなんといっても「快感」である。見えれば次は何かしたくなる。知ってしまえばやはりほっとけないのも人情だ。

副院長
小林 修三

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