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胸壁外科ブログ

<Vol.23>胸肋挙上術変法と過去の術式の相違点2

胸壁外科
2020.01.21

2019年11月の第19回Nuss法漏斗胸手術手技研究会には『胸肋挙上術変法と過去の術式の相違点』という演題を発表しました。手術の方法も歴史を学び、そこから進化していかなければならないと考えているからです。胸肋挙上術変法は漏斗胸の胸郭の特徴を理解し、過去の術式を研究して進化してきました。 1940年代に米国のRavitchによって開発されたラビッチ法は肋軟骨を広範に切除し、胸骨に割線をつけて変形を矯正します。原法では肋軟骨の一部しか再建しないので、金属棒や自己肋軟骨を非解剖学的位置に置いて下部胸骨を固定する変法が行われていました。創は大きくほぼ胸骨全長に渡ります。下部胸骨の固定が不十分だと呼吸が十分にできずに長期の人工呼吸が必要になることがあります。Nuss法以前の欧米では手術方法の主流でした。 胸骨翻転術は1960年代に和田壽郎らによって普及しました。第2肋間以下の胸骨と肋軟骨を一塊に摘出し、形を整えて裏返しにして固定します。剥離は広範で、胸壁の固定、生着などが問題点でした。長く日本の医学書に記載されていたため、いまだに多くの医師が漏斗胸手術と言えば翻転術と記憶しています。 胸肋挙上術原法は1980年代に和田の弟子たち(小生の学兄)によって開発されました。主に12歳以下の小児では胸郭に可塑性が残っているので、胸骨を切断・翻転することなしに肋軟骨の一部を切除、短縮してすべての断端を再建すると、肋骨の弾力によって胸骨の陥凹は引かれて矯正されます。肋間筋を広範に剥離し創は比較的大きくなります。中学生以上のほとんどの患者さんには十分な矯正ができないため、引き続き翻転術が行われていました。 それ以外にも多くの手術方法がありました。「軟骨を切除するのはすべてラビッチ法」ではありません。 胸肋挙上術変法では原法とは異なり肋間筋ほとんど剥離しないので胸壁が一塊として動き手術後に呼吸が保たれます。また胸骨を両側に引く矯正力が強くなります。陥凹の最深部である第5肋間以下の胸骨下端を切除し断端に第6-7肋軟骨を再縫合することによって胸骨は尾側にも引かれて矯正力が増し、強い左右差や成人にも適応できるようになりました。また突出した部分がある場合は反作用で引き下げられ矯正されます。最近では肋軟骨を頭側に0.5-1肋間引き上げて胸骨と再縫合することにより、漏斗胸に特徴的な腹側で急峻に尾側に向かう肋骨の走行を矯正して胸郭前後径を増加させ、胸板を厚くすることが可能になりました。創は原法の半分以下の長さで、入院期間も短くなりました。原法とは対象年齢、創の大きさ、手術後の形、入院期間、通院回数など大きく改善していますが、原法を開発した諸先輩に敬意をはらい、胸肋挙上術との名称を継続しています。原法は20年近くいずれの施設でも行われていません。 歴史を知りそこから学び常に変化していく事、先人の失敗を繰り返さないこと、温故知新が大切であると思っています。

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