胸壁外科ブログ
<Vol.29>2021年秋の学会
10月にはNuss法漏斗胸手術手技研究会、11月には胸部外科学会と漏斗胸手術に関連する学会で発表をしました。後者は会場での参加が可能で2年ぶりに対面での議論が行われました。これらの会で気が付いたことがあります。
今までは、どのようにしたらNuss法が安全に行えるかが議論の中心でしたが、たくさんの手術を行っている病院ではさらに進んで、左右非対称や外側まで陥凹が及んでいるなど通常のNuss法では矯正が難しい患者さんをどのように直すかを考えています。海外を中心にバーを複数本入れる、X型に交差して入れるなどの工夫が行われていますが、肋骨、肋軟骨、胸骨に割線を入れたり切除したりする工夫が複数の施設から発表されました。軟骨や胸骨を切らないから低侵襲であるとされていたNuss法が変化して、私たちが行っている胸肋挙上術変法(SCE)に近づいてきた気がします。「肋軟骨を切除するならバーはいらないのでは?」という質問もありました。私たちの方法ではバーは留置せずに左右非対称や突出した部分がある胸郭もよく矯正します。
SCEは広く認知されています。胸部外科学会では漏斗胸演題10題のうち3題がSCEに関連するもので、質問などの反応はおおむね好意的でした。しかし一部には20世紀に行われていたラビッチ法や胸肋挙上術原法と現在のSCEの違いを理解されていない方もいるようです。20世紀の方法の欠点を改良し、Nuss法の欠点を克服すべく工夫を重ねたのが私たちのSCEです。引き続き手術方法の改善と発信に努めていきます。
またNuss法を行わない私たちが、2022年の秋に「Nuss法漏斗胸手術手技研究会」を主催することになりました。この会に参加させていいただいて多くの事を学びました。ぜひ有意義な会にしたいと思います。