陽子線治療の特徴/仕組み
陽子線治療は放射線治療の1つの種類です。
陽子線治療とは、水素の原子核である陽子を加速した放射線を使用する治療です。
では、陽子線治療を行うためにはどうしたらよいでしょうか。
それには大がかりなシステムが必要です。まず陽子を加速するために、加速器が必要です。当院ではシンクロトロンという加速器を使用しています。そして、回転ガントリーと呼ばれる装置を利用して、陽子線ビームを360度いずれの方向からでも照射が行うことができます。この装置により、病変にあわせた治療が可能となり、副作用も減らすことが期待できます。
当院の陽子線治療装置には日立製作所の最新小型システムを設置しています。小型システムといってもテニスコート3面分以上の敷地面積を使用します。陽子線治療設備には広大な土地が必要であり、日本の現在都心部に陽子線施設が少ない主な理由となっています。
当院は、新宿から在来線で大船まで約50分、横浜から15分という都心に近い立地にありますが、最先端の小型システムを導入することにより、都心に近い陽子線治療施設を実現しました。
通常の放射線治療に用いるX線は、体を突き抜けます。すなわち体内に進むにつれて線量はある深さでピークを迎えた後、徐々に減少しながら反対側まで到達します。いわば「串刺し」のように通り抜ける性質があります。これに対して陽子線は腫瘍の位置で線量が最大となり、それより深部ではほぼゼロになります。この陽子線の止まる性質(ブラッグピーク)により、腫瘍部に高線量を集中させつつ、深部の正常組織の線量を抑えることができます。
図は体の断面(CT像)を模式化したものです。青丸で示した腫瘍に対しては、上流側の線量を抑え、下流側の線量をほぼゼロにできます。つまり、正常組織への不要な被曝を減らし、その分、腫瘍に高線量を集中的に照射できます。
陽子線にはとまるという性質がありますので、X線(治療に用いる通常の放射線)に比べて余分な被曝を減らすことができます。
このようにして、陽子線治療は腫瘍により多くの線量を与えて、その周囲にある正常組織の線量を減らすことができます。つまり、陽子線治療は、体に優しい治療となります。





