オンコロジー薬剤部
オンコロジー薬剤部について
当院では 2021 年に先端医療センターが開設され、さらに先進的な医療を提供できるようになりました。特にがん診療を充実すべく、包括がんセンターの一部としてオンコロジーセンターを備えています。
オンコロジーに携わる薬剤師は主に、外来化学療法を行う患者さんに対して適切な薬物治療が行われているか、有害事象が出ていないか等確認し、副作用対策を含めた様々な情報提供やモニタリングを日々行っています。
また、抗がん剤の調製も行っており、2023 年8月より抗がん剤調製ロボットである ChemoRo を導入しました。これにより業務の効率化と抗がん剤暴露の低減化を実現しています。
- オンコロジー担当薬剤師:16名
- がん薬物療法認定薬剤師:4名
- 外来がん治療認定薬剤師:1名
- 緩和薬物療法認定薬剤師:1名
- 緩和医療暫定指導薬剤師:1名
当院は緩和医療専門薬剤師研修施設に認定されています。
スタッフ
湘南鎌倉総合病院のオンコロジー部門では現在 16 名の薬剤師が業務に携わっています。 認定資格を持つベテランから若手、ママさん薬剤師を含め幅広い年齢層のスタッフが活躍しています。 若手薬剤師は先輩薬剤師をはじめ、医師や看護師、患者さんに日々学びながら成⾧しています。
また、がんの認定薬剤師が計 5 名在籍しているため、認定取得を目指しやすい環境になっています。
患者さんにとっても自分の治療や生活等について相談しやすい環境となっています。

オンコロジー薬剤師の一日
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 8:00 | 入院患者さんの抗がん剤調製スタート |
| 8:30〜 | 外来患者さんの抗がん剤調製スタート |
| 12:00〜13:00 | 交代で休憩 |
| 14:00 | 翌日の抗がん剤の準備 |
| 15:00〜 | 面談・翌日以降の抗がん剤治療の準備 |
| 16:30〜 | 終礼(看護師さんと情報共有) |
オンコロジー薬剤師だより
昨年までの業務量
| 2022 年 | 2023 年 | 2024 年 | |
|---|---|---|---|
| 外来化学療法件数 | 8,648 件 | 10,621 件 | 11,829 件 |
| 入院化学療法件数 | 2,731 件 | 2,590 件 | 3,131 件 |
| 服薬指導件数 | 4,932 件 | 5,232 件 | 5,762 件 |
点滴調製などで病院では必須となる混注操作について、4/1 から入職された先生方に講習を行いました。
製剤によってバイアルやアンプルなど様々で、薬剤自体も凍結乾燥製剤や液体があり、薬剤ごとで調剤時に注意すべき点が異なります。
バイアル製剤での陰圧操作やアンプル製剤での表面張力等、座学ではなく実際に触って体験してもらえる良い機会になったと思います。
講習の様子↓

5月号の内容
4月号でも紹介がありましたが、オンコロジー薬剤師の1日の業務について、1つ1つスポットを当てて1か月ごとに紹介していこうと思います!
4月の業務量
- 外来化学療法件数:1104件
- 入院化学療法件数:324件
- 服薬指導件数:481件
今後の予定(お仕事紹介)
- ① 抗がん剤治療の事前準備 ← 5月号
- ② ミキシング&各種デバイスの紹介
- ③ ChemoRoの紹介
- ④ 抗がん剤の処方監査
- ⑤ 抗がん剤開始予定の患者さんとの面談
5月は抗がん剤治療の事前準備について紹介します。事前準備には大きく分けて以下の2つの業務があります。
① 翌日に抗がん剤治療で使用する薬剤の調剤
翌日に抗がん剤治療を受ける患者さんが使用する予定の抗がん剤や輸液、吐き気止めなどの必要な薬剤を調剤します。
この業務をする前日には、必要な薬剤はすでに収集済みです。
集められた薬剤の中から必要な薬剤を取り出し、患者さんごとの処方に応じて分類します。また、フィルターなどの器具や内服薬の準備も行います。
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② 翌々日に抗がん剤治療で使用する薬剤の収集
この業務は、調剤に必要な薬剤を収集する業務です。
抗がん剤の調剤を効率よく進めるため、使用予定の薬剤を一か所に集めておきます。
抗がん剤には、保管に注意が必要な劇薬や毒薬も多く含まれており、取り扱いには十分な注意が必要です。
集めた薬剤は、翌日に患者さんごとに調剤し、翌々日に投与されることになります。
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掲載日:2025/7/10
6月号の内容
5月の業務量
- 外来化学療法件数:1124件
- 入院化学療法件数:312件
- 服薬指導件数:507件
今年度も5月から薬学生が実習に来ています!
薬学生は5年生になると、薬局と病院でそれぞれ11週間実務実習を行います。当院でも実習生の受け入れをしており、短期間ではありますが実習の一部としてオンコロジーの業務を学んでもらっています。オンコロジーに携わる薬剤師からの講義を始め、抗がん剤の混注、外来患者さんを対象とした服薬指導や新規化学療法の面談見学等の業務を行っています。

病院によっては化学療法を行っていないところもあり、実習中にオンコロジー業務について学ぶことができない場合もありますが、当院では実際の臨床現場でたくさんオンコロジー分野について学ぶことができます。
オンコロジーセンターでの実習日程
| Day 1 | Day 2 | Day 3 | Day 4 | Day 5 | Day 6 | |
| A | 抗がん剤混注 | 抗がん剤混注 | 調べもの | 服薬指導 | 休み | 抗がん剤準備 |
| B | 抗がん剤混注 | 抗がん剤混注 | 抗がん剤準備 | 休み | 服薬指導 | 調べもの |
| C | 休み | 調べもの | 抗がん剤混注 | 抗がん剤混注 | 抗がん剤準備 | 服薬指導 |
| D | 抗がん剤準備 | 休み | 抗がん剤混注 | 抗がん剤混注 | 調べもの | 服薬指導 |
| E | 調べもの | 服薬指導 | 休み | 抗がん剤準備 | 抗がん剤混注 | 抗がん剤混注 |
掲載日:2025/8/25
7月号の内容
6月の業務量
- 外来化学療法件数:1030件
- 入院化学療法件数:285件
- 服薬指導件数:481件
今後の予定(お仕事紹介)
- ① 抗がん剤治療の事前準備
- ② ミキシング&各種デバイスの紹介 ← 7月号
- ③ ChemoRoの紹介
- ④ 抗がん剤の処方監査
- ⑤ 抗がん剤開始予定の患者さんとの面談
7月はミキシングとデバイスについて紹介します。抗がん剤は患者さんの体表面積や体重、腎機能等で用量が決まる薬剤が多いため、患者さんごとで使用する抗がん剤の量が異なります。
バイアルやアンプルから、患者さんに使用する薬剤を必要量シリンジで抜き取り、希釈等に注意し輸液バックに入れます。

また、抗がん剤の調製には様々なデバイスを使用します。
BD PhaSeal system®
揮発性の高い抗がん剤ではバイアルから吸った空気が漏出しないように、閉鎖型のデバイスを使用します。このデバイスを使用すると、バイアル内の空気が、デバイスのバルーン内へ移動します。
これにより、抗がん剤に触れた空気が外に漏出せず抗がん剤暴露のリスクが低減します。下記写真(左)のように器具を取り付け、写真(右)のように使用します。
インフューザーポンプ®
インフューザーポンプ®は携帯型輸液ポンプのひとつです。外来で化学療法を受ける患者さんで、FOLFOXやFOLFIRINOXなどの5-FUという抗がん剤を持続投与する治療で使用します。
最後に5-FUを46時間投与し続ける必要があるため、インフューザーポンプ®を使用することによって、外来での化学療法が可能になっています。 5-FUの持続投与が終了したときに患者さんがご自身で針を抜く必要があります。 外来での長い治療時間を活かし、オンコロジーセンターの看護師が抗がん剤投与中に 針の抜き方を説明し、患者さんとご家族が不安なく対応できるようにしています。
CADD-Legacy PCA Model 6300®(以下、CADD)
CADD®は携帯型精密輸液ポンプのことです。CADD®にビーリンサイトという抗がん剤を充填し、一定量の薬液の投与を可能にしています。ビーリンサイトを外来で使用している患者さんは、週に2回程度通院しCADD®を交換します。
薬液を入れるカセッターは3日分または4日分で作成するため、最大限無菌の環境に配慮して調製しています。
ビーリンサイトを28日間連続して治療が必要な薬剤のため、CADD®を使用することによって、外来受診を週2回にすることが可能となっています。
インフューザーポンプ®とCADD®の違い
| インフューザーポンプ® | CADD® | |
|---|---|---|
| 使用する薬剤 | 5-FU | ビーリンサイト |
| 1回の使用時間 | 46時間 | 3~4日 |
| 電池の有無 | 不要 | 必要 |
掲載日:2025/11/1
8月号の内容
7月の業務量
- 外来化学療法件数:1099件
- 入院化学療法件数:339件
- 服薬指導件数:522件
今後の予定(お仕事紹介)
- ① 抗がん剤治療の事前準備
- ② ミキシング&各種デバイスの紹介
- ③ ChemoRoの紹介 ← 8月号
- ④ 抗がん剤の処方監査
- ⑤ 抗がん剤開始予定の患者さんとの面談
8月はChemoRo®ついて紹介します。ChemoRo®は抗がん剤自動調製ロボットです。ChemoRo®は完全受注で生産されており全国で24台が稼働しています。(2025年6月現在)
主に大学病院や公立病院での導入が多く、民間病院で採用しているのは2病院のみで、そのうちの1か所が当院です。当院は2023年8月にChemoRo®を導入しました。
年々化学療法件数が増加している当院では、ChemoRo®の導入により業務の効率化と抗がん剤暴露の低減化を実現しています。
ChemoRo®の機能
ChemoRo®は凍結乾燥製剤、液体製剤のどちらにも対応しておりミキシングだけではなく、事前溶解やDrug Vial Optimization(DVO)の設定、Closed System Drug Transfer Device(CSTD)の利用なども可能です。凍結乾燥製剤の事前溶解は、溶解を終えたい時間を設定し薬剤をChemoRo®にセットしておくと、その時間までに薬剤を溶解する機能です。
DVOとは薬剤バイアル最適化のことで、一度の調製で使いきらなかった抗がん剤をChemoRo®が把握し、残液を他の調製でも使用することができる機能です。時間単位で残液の保管期限を設定することも可能となっています。抗がん剤は高額なものが増えており、医療費のひっ迫となるためこの機能により抗がん剤の破棄を減らすことができます。
※CSTDとは、閉鎖式薬物移送システムを利用する機能のことで、揮発性の高い抗がん剤をChemoRo®で調製した場合、閉鎖式デバイスを輸液バックに穿刺した状態で払い出すことが可能です。

⇧ChemoRo®内の残液があるバイアル保管の様子
ChemoRo®の内部
ChemoRo®の指示に従って下記写真①のように輸液バックと薬剤をセットします。青いトレーがChemoRo®の中に取り込まれ、写真②、③のように薬剤調製が始まります。調製が終了した輸液バックは下記写真の赤丸の部分から排出されます。使用したシリンジや不要となったバイアルは、ChemoRo®内のダストボックスへ破棄されます。この仕組みも、抗がん剤暴露の低減化に繋がっています。新しい抗がん剤の追加登録やダストボックスの使用率の目視化、アラート表示等、当院で更なる効率化を目指して薬剤師一同でChemoRo®のメンテナンス、バージョンアップ等をChemoRo®を開発されたYUYAMAさんと日々協議しています。

YUYAMAさんにChemoRo®開発についてお話を伺いました
Q.開発にはどのくらいの期間がかかりましたか?
A.開発を始めてから少なくとも6~7年程度、基礎の研究を合わせるとそれ以上かかっています。
Q.ChemoRo®開発で大変だった点はどのようなところですか?
A.調剤を支援するロボットは、開発の段階で製薬会社に協力してもらえることが前提となります。ロボットは現在発売されている薬剤に対応できなければならないからです。抗がん剤調製ロボットは、当時普及していなかったため製薬会社の協力を得ることが大変でした。
Q.設置後、どのくらいで稼働できるのでしょうか?
A.1か月くらいです。ChemoRo®の個体差があるため、設置後針刺しの角度などの微調節が必要となります。
掲載日:2025/11/1









