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外来化学療法室

外来化学療法室

現在一ヶ月で約900件治療を行っております。 疾患としては悪性リンパ腫が最も多く、そのほか大腸癌、肺癌、乳癌、膵癌、肺癌、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの疾患が多くなっています。登録レジメンは徳洲会オンコロジーセンターにて決められたレジメンに則り整備していますが、定義されていない疾患や緩和的な化学療法(3次治療以降など)もあり、一部は院内のCancer Boardで検討の上院内レジメンとして登録して治療しております。処方は主治医から原則投与3日前までに行うこととし、薬剤師・医療事務・医師の3重のチェックを行い処方の誤りがないようにしています。 当日は担当医の診察およびデータチェックの後、センター内の調剤室で薬剤師によるミキシングが行われ順次投与されます。副作用の対応や定期処方は主治医もしくは担当医が行うことにしています。

外来化学療法室の実績

外来化学療法の年間実績(2018年~2022年)

抗がん剤治療を受けるあなたに

 

このページは、抗がん剤治療を受けるあなたとあなたを支えてくれるご家族や、お友達が抗がん剤治療をどのようなものか理解して、安心して抗がん剤治療を受けられるようにしようとすることを目的としています。 抗がん剤治療を受けることになったあなたは、多くの疑問や心配がわいてくることでしょう。また、抗がん剤治療が行なわれている最中にもいろいろな疑問や心配がおこってくることでしょう。きっとここにその答えがみつかると思います。

第1章 はじめに

抗がん剤治療を行なっている期間、あなたは治療に取り組んでいるのだというしっかりとした気持ちでいなければなりません。たとえば、抗がん剤治療を行なうと様々な副作用が出現してきます。中には、自分ではどうにもならないような辛いこともあるかもれません。起こり得る副作用などをあらかじめ十分に理解してその対処法を知っておくことは、抗がん剤治療を辛いものにしないための方法でもあります。
多くの疑問や不安については医師や看護師、薬剤師にどしどし聞いてください。あなたのご家族やお友達、医療スタッフみんなが協力してあなたの体のなかにあるがんに立ち向かうのです。

第2章 抗がん剤治療とはどのようなものか

抗がん剤治療はどのように効くのか

抗がん剤治療は、がんを抗がん剤という薬物で治療する方法です。
人の体はすべて、細胞というとても小さな単位でできています。この細胞が集まって肝臓、腎臓、心臓といった臓器が作られ、これら臓器が集まって人の体ができているのです。そして細胞は分裂、成長、消滅を繰り返しながら臓器を保っています。
正常の細胞は、分裂をしすぎないようにコントロールされています。ところが、体の中にできた腫瘍細胞(がん細胞)は、コントロールをはずれて細胞分裂を繰り返し成長し続け、次第に大きな塊(腫瘍)となっていきます。抗がん剤は、この腫瘍細胞を破壊する薬剤です。
抗がん剤にはがん細胞そのものを攻撃する細胞障害性抗がん剤、細胞が増殖する経路をブロックする分子標的薬剤、体の免疫細胞の働きを調節してがんを攻撃させる免疫チェックポイント阻害剤、がんの成長を促すホルモンの分泌やホルモンががん細胞に作用するのを抑えたりすることでがん増殖を阻害するホルモン剤などがあります。がんを徹底的にやっつけるために、抗がん剤を数種類組み合わせて使用することもあれば、一つの薬剤で治療することもあります。この抗がん剤により、腫瘍を完全に体から消滅させたり、腫瘍が広がるのを抑えたり、腫瘍による症状を軽減したりします。
腫瘍細胞(がん細胞)は、元々は自分の細胞です。自分の細胞の一つが突然に変化し、異常に増殖したものと考えられ、自分の正常の細胞との違いはほんの少しです。したがって、抗がん剤は腫瘍細胞を破壊しますが、自分の正常の細胞も相当な影響を受けてしまいます。このため、副作用が出てしまうのです。

抗がん剤以外の治療法

今受けようとしている抗がん剤治療のほかにも、手術療法、放射線療法があります。また、がんやがんの治療によって生じる様々な症状を緩和する緩和医療もあります。これらを単独で行う場合もあれば、抗がん剤治療と組み合わせて行う場合もあります。どのような治療法があるかは、医師から十分に説明を受けてください。そして必要があれば、あなたとあなたのご家族と医師とで最も良い方法を選択してください。

どのような薬剤をどのように使用するか

医師があなたに最も良い抗がん剤治療を決定しています。同じがんでも抗がん剤治療は一種類ではありません。しかも、あなたのがんの進展度(進み具合)、あなたの体力、あなたの今後の人生の生き方などを考慮して、あなたにとって一番良い抗がん剤治療を決めなくてはなりません。したがって、どのような薬剤をどのように使用するかは、医師に任せるのがよいでしょう。
がんの種類、進行具合などにより、抗がん剤の使用の期間・頻度は異なります。抗がん剤には経口薬(のみぐすり)、注射薬(点滴)、貼付薬(皮膚に貼る薬)などがあり、それらの薬剤を使用する頻度は毎日、毎週1-2回、毎月1-2回など、治療法によって様々です。また治療の期間は通常最低でも数ヶ月からはかかりますが、長い治療になると何年もかかることもあります。病状によって治療の頻度や期間が変更することもしばしばあります。このほかに、腫瘍近くまでカテーテルという細い管を通して抗がん剤を注射することもあります。
いずれにしても、最も大切なのは自分勝手に薬を中止したり、量を変えたり、病院へ来なくなったりしてはいけません。もし自分に行われている抗がん剤治療に対して不安になったら、必ず医師か看護師に伝えてください。

どこで抗がん剤治療を行うか

毎週1回行う抗がん剤の注射などの治療や経口薬のみの治療なら、外来での治療が可能です。できる限り通院で治療を行うことをお勧めします。しかし、入院でしか行えない抗がん剤治療や、強い副作用の可能性がある場合には治療後の経過を診るために入院を勧めることもあります。
抗がん剤治療をして数日経つと、血液のなかの白血球が減ってくる場合が多くあります。この白血球減少を治療する注射があり、場合により毎日行わなければならないこともあります。したがって、外来で治療する場合、白血球の減少している時期は毎日のように通院しなければなりません。またこの時期に発熱すると、入院が必要になることがあります。

通院治療で行える場合には、できるだけ通院で行うことをお勧めます。
抗癌剤治療をして数日たつと、血液のなかの白血球が減ってくる場合が多くあります。この白血球減少を治療する注射があります。この注射は、毎日のようにしなければならないこともあります。したがって、外来で治療する場合、白血球の減少している時期は毎日のように通院しなければなりません。白血球が減少しいる時期に発熱がおこってきたなら、かならず入院治療になります。

点滴の場合の副作用

副作用の詳細については次の章で述べます。 点滴で行う場合、注射針またはカテーテル(静脈の中にいれる細い管)が静脈に入ってしまえば、ほとんどの点滴している部分に痛みはありません。もしかすると、点滴をしている部分に冷たさやしびれを感じることがあるかも知れませんが、強い痛みでなければ心配はいりません。もし、点滴をしている部分に痛みを感じた場合には、医師や看護師に伝えてください。
点滴はできるだけ太い静脈に入れますが、できるだけ関節のように曲がる部分には入れないようにしています。以前に痛みを感じたことがある部分があれば、その部位をお知らせください。 点滴を長期間にわたって行っていると、点滴の針やカテーテル(細い管)が入っている部分が痛くなったり、赤くなってきたりすることがあります。 このときには点滴の部位を変更する必要がありますので、医師や看護師に伝えてください。

今まで飲んでいた薬

今まで飲んでいた薬は、必ず医師に知ってもらわなければなりません。お薬によっては、これから使用する予定の薬と相互作用して重大な反応が起こってしまう場合もあるからです。今飲んでいる薬が、今治療しているがん治療にまったく関係のない薬であったとしても、必ず医師や薬剤師に伝えてください。また、受診するときにはお薬手帳を持参することをお勧めいたします。

仕事について

仕事は続けられます。抗がん剤治療を行っている間でも、仕事をしている人は多くいます。俳優やニュースキャスター、政治家のなかにも、抗がん剤治療を行いながら仕事している人もいます。 治療の内容により異なりますが、仕事がお休みになる前日や休日に治療を行うのも一つの方法です。抗がん剤治療の計画は、あなたと協議しながら行いますので、できるだけ仕事は続けるつもりがよいでしょう。 仕事を続けるためには、職場の上司には、あなたの状態をよく伝えておくことも必要です。必要があれば、あなたの許可を得てから、医師からあなたの上司に病状を伝えることもできます。職場の人事労務担当者、産業医と相談し「仕事と治療の両立支援」のための勤務情報を医師あてに作成してもらうとよいでしょう。この情報に基づいて、医師からは治療の状況や就業継続の可否について意見書を作成しますので、職場の担当者に渡して頂けるとスムーズに進みます。

就労支援について

治療効果について

治療が有効かどうかは、血液検査、CTなどでわかります。治療がうまくいっているかどうかは、医師にお尋ねください。
抗がん剤治療は副作用の起こることが多いのですが、治療がうまくいっていても副作用が出ないこともありますので、副作用が出なかったからといって、治療効果がなかったと思わないようにしてください。抗がん剤は非常に多くの種類があり、抗がん剤の種類によって副作用の出方は異なります。また副作用が出た場合、治療がうまくいっているためと我慢をしなくてもよいのです。たしかに副作用を我慢しなければならないことも多いのですが、副作用を軽減するためのいろいろな手段があるかも知れません。 副作用とその対処法については、次の章で詳しく述べます。

第3章 抗がん剤治療の副作用

抗がん剤治療の副作用

抗がん剤治療には、副作用があることは多くの人が知っていますので、どのような副作用があるのか誰しも気になるところです。抗がん剤治療が始まると、自分に副作用が生じるのか、またどんな形で抗がん剤治療の副作用が起こるのか不安になるものです。また、どのように副作用に対処するのが一番よいのか知りたいものです。この章では、こういった副作用に対する疑問にお答えします。
抗がん剤治療を受ける前にこの章をご覧になると、余りにも多くの副作用について書いてあるので憂鬱になるかもしれませんがこれだけは覚えていてください。ひとりひとりがそれぞれ受ける副作用はほんのわずかで、程度も人によって差があると言うことです。
あなたに副作用が起きるか、またどのくらい強いものかということは、どの種類の薬をどれだけ使うか、さらにそれに対して、あなたの身体がどのように反応するかによります。従って、あなたが受ける抗がん剤治療には、どのような副作用が起きやすく、それがどのくらい続いて、どの程度のものなのか、そしてどのような時にその副作用に対して治療が必要になるのか、医師に十分説明を聞いておくことが大切です。

なぜ副作用が起きるのか

腫瘍(がん)細胞は、急速に分裂して成長するので、抗がん剤は成長の速い細胞を殺すように作られています。しかしながら、ある種の健康な細胞にも急速に細胞分裂するものがあり、抗がん剤は腫瘍(がん)細胞だけでなくこの様な正常細胞にも影響を与えてしまうのです。こういったことが副作用の原因になるのです。成長の速い正常細胞には骨髄で造られる血液細胞、消化器の細胞、生殖器の細胞、毛根細胞があります。また抗がん剤は、心臓、膀胱、肺、神経系の細胞にも障害を与えることがあります。こういったことから最も多い副作用は、嘔気、嘔吐、脱毛、疲労感です。

副作用の持続期間

抗がん剤治療が終了すると大抵の正常細胞は急速に回復してきますので、副作用の多くは個人差がありますが徐々に消失し、健常細胞は再びもとのように成長します。副作用の期間がどのくらいかかるのかは、普段の健康状態やどのような薬を使用したかによります。多くの副作用はかなり早く消失しますが、ものによっては、数ヵ月、数年続く場合もあり、ときに心臓、肺、腎臓、生殖器等への障害は生涯残ることもあります。
また、ある種の抗がん剤には発がん作用があり、何年も経って他のがんを発症することが希にあります。しかしながら、ほとんどの人は長期間問題を抱えることはありませんし、医師も抗がん剤の副作用を予防するために常に最大限の努力をしていますのでご安心ください。たとえば、腫瘍(がん)細胞には強力に作用し、正常細胞には余り危害を加えないようにする種々の薬剤や、投与方法を開発、使用しています。 抗がん剤の副作用は辛いものですが、腫瘍(がん)細胞を破壊する作用(治療効果)とのバランスが大切です。長期間抗がん剤治療を受けていると、時々副作用で病気と戦う勇気を失うこともあります。そのようなときは遠慮せず医師に相談してください。場合によっては使用する薬を変えたり、スケジュールを変更したりすることもありますし、副作用を少なくする方法を指導できる場合もあります。一番大切なことは、医師はいつも抗がん剤の治療効果と副作用とを考えながら治療を進めているということです。次に、抗がん剤治療を受けているとよくある副作用への対処方法を述べてみます。

吐き気、嘔吐について

抗がん剤が胃や嘔吐中枢に作用して吐き気、嘔吐を起こすことがあります。以前は抗がん剤治療をしている最中や抗がん剤治療後には必ずといってよいほど、吐き気と嘔吐がありました。しかし最近では、抗がん剤治療の時に使用すると非常によく効く吐き気止めの注射やのみ薬ができたので、現在ではほとんど吐き気や嘔吐がないこともあります。吐き気、嘔吐が起こるときには、いつもムカムカしている人もいれば、抗がん剤を投与された後にだけ強い吐き気、嘔吐を起こす人もいます。こういった症状は投与後すぐに始まったり、8時間から12時間後に始まったりします。また症状が数時間から丸1日続く場合もあります。ある人は投与前に薬を見ただけで、吐き気、嘔吐を起こすこともあります。
丸1日以上吐き気、嘔吐が続く場合、また吐き気が強く水分も摂れない場合は必ず医師や看護師に相談してください。吐き気、嘔吐は予防したり軽くしたりできるものです。
もし、吐き気の治療をしてもなお、吐き気が残っているようなら、次に述べるようなことも試してみてください。

・一度に食べ過ぎないで、少しずつ回数を増やして食べましょう。

・食事中は水分を摂り過ぎないようにし、食前1時間、食後1時間に水分を摂るようにしましょう。

・ゆっくり飲食しましょう。

・甘いもの、揚げ物、脂肪分の多いものは避けましょう。

・冷やしてから食べると臭いが気にならなくなることもあります。

・よく噛んで食べ、消化を助けましょう。

・とくに朝、吐き気の強い人は、コーンフレイクやトースト、クラッカーなどの乾燥したものを取ってみるのも一つの方法です。歯痛、咽頭痛、唾液の少ない人はこの方法は避けたほうがよいでしょう。

・りんごジュースやぶどうジュースなど甘味の少ないものや、炭酸を抜いた炭酸飲料などを冷やして飲むのもいいでしょう。

・氷やハッカ味あるいは酸っぱい飴をなめるのもいいかもしれません。
 歯痛、咽頭痛のある場合は酸っぱいものは避けましょう。

・料理の臭い、煙、香水など遠避けた方がよいでしょう。

・調理する気になれない場合はあらかじめ冷凍食品などを用意しておきましょう。

・食後2時間位は横にならないで、椅子にかけて休むのがよいでしょう。

・ゆるめの服を着ましょう。

・吐き気がするときはゆっくり深く呼吸をしてみましょう。

・友達や家族とおしゃべりをしたり、音楽鑑賞、映画テレビなどを観たりして気を紛らわすのも一つの方法です。

・抗がん剤治療で吐き気の強い人は、投与2、3時間前から食事はしないようにしましょう。

脱毛について

脱毛はよくある副作用ですが必ず起きるということでもありません。使用する薬によるので医師は脱毛が起きやすいかどうか教えてくれるでしょう。脱毛は、薄くなる程度のものから、完全に抜けてしまうまで程度は違います。治療が終わると大抵は毛が生えてきますし、中には治療中に生えてくる人もあります。脱毛は頭だけでなく、手足、腋毛、恥毛も抜けることがあります。脱毛はすぐには起きません。普通は抗がん剤が数回投与されてから始まります。徐々に抜け始める場合と、ごそっと抜ける場合があります。毛は、頭皮の近いところで抜けるので、頭皮が痛くなる事もあります。治療中に新しく生えてくる毛は枝毛になっていたりしてパサパサしています。

抗がん剤治療を受けているときには、次のように頭皮や頭髪の手入れに気を付けましょう。

・刺激の弱いシャンプーを使いましょう。

・柔らかいブラシを使いましょう。

・頭髪を乾かすときは、低い温度でゆっくりと乾かしましょう。

・ローラーブラシを使ってセットはしないようにしましょう。

・頭髪を染めたりパーマをかけることは勧めません。

・頭髪を短めに整えておくと、薄くなった頭髪が目立たなくなりますし、脱毛の処理も簡単になります。

脱毛がひどくなった場合、ターバンやスカーフを巻いたり、帽子をかぶったり、ウィッグをつけたり、ヘアピースを使ったりするのもよいでしょう。いわゆるTPOにあわせて選ぶとよいと思います。何がよいとか悪いとかはありませんのであなたのお好きなものでよいわけです。何もつけない人もいます。
脱毛は不愉快な副作用で、時に気落ちしたり悲しくなったりします。しかし抗がん剤治療が終われば、必ず元通りになります。

疲労感、貧血について

抗がん剤は骨髄に作用して赤血球を減少させます。赤血球は酸素を身体中に運ぶ作用がありますので、これが減少すると身体の組織が十分に酸素の供給を得られなくなります。このような状態を貧血と呼びます。貧血になるととても疲れやすくなります。その他に、眩暈や、震え、息切れなどが起きることもあります。こういった症状が起きたら必ず医師に報告してください。医師は治療中に何度も赤血球の数を調べ、貧血がひどい場合は輸血をする場合もあります。

貧血になった場合、次のように心掛けるとよいでしょう。

・休息を十分に取り、夜は睡眠をきちんと取り、できるなら昼寝もしたほうがよいでしょう。

・必要なことだけをするようにし、余り忙しくしないようにしましょう。

・決して無理をしないように、お子さんの世話や、買い物、家事、車の運転など、他の人に頼める場合は頼んでしまいましょう。

・十分に食事を摂りましょう。鉄分の多く含んだものに加え、緑黄野菜、赤身の肉とくにレバーを多く食べましょう。

・座っていたり、横になっているときに、急に立ったり、起き上がると眩暈を起こすので、ゆっくりとしましょう。

    感染について

    抗がん剤治療を受けている間は、感染にかかりやすくなります。これは抗がん剤が骨髄に作用して、白血球を減少させてしまうからです。白血球は、感染と戦うとても大切な血液成分なのです。感染は口の中、皮膚、肺、直腸、泌尿生殖器などいろいろな場所に起きやすくなります。医師は頻繁に白血球の数を調べ、非常に少なくなると抗がん剤治療を延期したり、薬の量を少なくしたりします。

    白血球の数が少なくなったとき次のようなことに注意しましょう。

    ・毎日何度も手を洗いましょう。とりわけ、トイレの前後はよく洗うように心掛けましょう。

    ・排便後は肛門の周りを清潔にしましょう。肛門がヒリヒリするような場合や、痔がある場合、医師や看護師に適切なアドバイスをしてもらいましょう。白血球が減少しているとき(特に白血球数が2000/mm3以下の時)には、特に注意が必要です。

    ・排便後は、できるだけ柔らかく、消毒薬をしみこませたガーゼなどで拭くようにしましょう。

    ・まわりに風邪、はしか、水痘などの感染症にかかっている人がいたら近づかないようにしましょう。

    ・人ごみは避けるようにしましょう。

    ・指のささくれをむしったりしないように気を付けましょう。

    ・はさみ、包丁、ナイフなどでけがをしないように気を付けましょう。

    ・髭を剃る場合は皮膚を傷つけないように電気カミソリを使いましょう。

    ・歯肉を痛めないように軟らかい歯ブラシを使いましょう。

    ・にきびをひっかいたり潰したりするのはよくありません。

    ・入浴の際は熱いお湯に入らず、程よい温度で毎日入りましょう。

    ・お風呂から上がったときは皮膚をゴシゴシ擦らずに乾かしましょう。

    ・踵がカサカサしたりしているときは、ローションやオイルで手入れをしておきましょう。

    ・切り傷、擦り傷は、すぐにぬるま湯で洗い、石鹸できれいにして消毒しましょう。

    ・庭仕事や動物の世話をする場合は、必ず手袋をして手を保護しましょう。

    ・主治医に相談しないで予防注射を受けないように気を付けましょう。

    いくら注意をしていても、感染を起こすことがあります。感染の兆候に注意して下さい。
    特に、目、鼻、口の中、会陰部には気を付けましょう。感染の兆候には次のようなものがあります。

    ・38度以上の発熱

    ・悪寒、戦慄

    ・発汗

    ・軟便、下痢(感染ではなく抗がん剤の副作用のこともあります。)

    ・排尿時にやけるような感じ

    ・激しい咳や咽の痛み

    ・おりもの、膣のかゆみ、傷、にきび、おできの周りが赤くなり腫れてきたとき

      この様な兆候が出たときはむやみに鎮痛下熱剤を使わずにすぐに医師に連絡を取りましょう。

      血液凝固不良について

      抗がん剤は骨髄に作用して、血小板の数を減少させます。血小板は血を止めるのには欠かせない血液成分です。血小板が減少すると、ちょっとしたことで出血したり、青あざになったりしてしまいます。もし知らないうちに青あざや皮下出血ができていたり、尿が赤くなったり、血便、黒い便が出たら医師に連絡しましょう。その他にも、不意に鼻血が出たり、歯肉から出血したりするような場合も要注意です。医師は血小板数を定期的に調べ、もし減少が激しい場合は、血小板輸血を行うこともあります。

      次に血小板が低い場合に気を付けることを述べます。

      ・単なる風邪薬でも薬を使う場合は必ず医師や看護師、薬剤師に相談してください。

      ・医師の許可があるまでアルコールは控えましょう。

      ・歯ブラシは軟らかいものを使用し、歯の清潔に気を付けましょう。

      ・鼻をかむときはそっとするようにし、指でほじらないようにしましょう。

      ・ナイフなどの刃物は気を付けて使いましょう。

      ・アイロンや調理の際に火傷をしないように気を付けましょう。

      ・オーブンの中に手を入れる際は保護手袋を着用しましょう。

      ・けがをしそうなスポーツは止めましょう。

      ・庭仕事やとげのある植物のそばで仕事をするときは厚めの手袋をしましょう。

      口、歯茎及びのどの問題

      抗がん剤治療は口やのどの痛みを起こすことがあります。また口とのどがカラカラになって出血を起こすこともあります。痛みに加えて、口の中のたくさんの細菌によって感染が引き起こされてしまいます。抗がん剤治療の間はこのような感染症は治療しにくく、重症になることもありますのでそうなる前に予防をすることが大切です。

      できることなら抗がん剤治療の開始前に歯医者を受診し、口のなかの病気をチェックしてもらってください。たとえば口内炎、歯肉炎、そして入れ歯が合っているか、治療した歯がきちんとなっているかを診てもらいましょう。

      抗がん剤治療中の歯ブラシでの磨き方に特別なものはありません。しかし大切なことは、歯磨きによって口の中がほんの少しではあるけれど傷つき、ここから少しの細菌が血液中に入ってしまうことです。抗がん剤治療の副作用で白血球の少なくなった時期では強く歯磨きをしないようにし、歯ブラシはできるだけ柔らかい毛の歯ブラシを使用しなければなりません。歯ブラシは使用後よくすすぎ乾いたところに置いておきましょう。白血球が少なくなっていない時期では、普通に歯磨きをしてよいです。毎食後必ず歯を磨きましょう。

      口の中が荒れてしまい、柔らかな歯ブラシでも痛みを感じるときは、綿棒かガーゼを使って歯をきれいにしてください。イソジンという消毒薬の入ったうがい薬が出されることも多いでしょう。また口の中が荒れないように予防するうがい薬もあります。

      口の中が痛くなって食事が摂れなくなったとき、痛みに対して治療が必要になります。そのようなときには医師に相談してみましょう。局所麻酔の入ったゼリーや痛みを和らげるための薬を処方してくれるでしょう。

      食事の仕方について、次のように注意しながら食べてみるとよいでしょう。

      ・食べ物は冷たくするか常温にして食べるとよいでしょう。

      ・やわらかく刺激のないものを選びましょう。おじや、お粥、アイスクリーム、

      ・ミルクシェイク、乳幼児の食べ物、りんごのすったもの、バナナ、マッシュポテト、

      ・半熟のたまご、スクランブルエッグ、プリン、寒天など。

      ・果物や野菜はミキサーにかけてから食べるとよいでしょう。

      ・熱いものや硬いもの、トマト、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの酸味のあるもの、スパイスや塩分の効いた食べ物は避けましょう。

      口の中が乾いてしまい痛くて食べることもできないようなときには、沢山水分を摂り、氷、砂糖の少ないあめやアイスキャンデーをなめるのもよいでしょう。 パンなどはバター、マーガリン、スープなどにつけて食べるのもよいかもしれません。

      乾いたパリパリするような食べ物は、スープ、ジュース、お味噌汁などにつけてから食べましょう。

      唇が乾いたらリップクリームを使ってください。

       抗がん剤治療を始める前に、私たちの病院では歯科口腔外科を受診し、口の中の専門的なケアができるようにしています。これにより、抗がん剤による様々なお口の中のトラブルを軽減できるように努めています。詳しくは医師にご相談ください。

      下痢症

      抗がん剤治療中に下痢や軟便になることがあります。下痢が24時間以上続いたり、下痢に伴って痛みやしぶり腹になるときは医師に診てもらってください。ひどいときは下痢止めが必要となります。下痢をコントロールするには食事療法が必要です。

      食事にあたっての注意は次の通りです。

      ・一回に食べる量は少なく、食事の回数を多くしましょう。

      ・生の野菜や果物、豆類、ドライフルーツ、ポップコーンなどのように繊維の多く入った食べ物は下痢を助長し痛みを起こしやすいため避けたほうがよいでしょう。

      ・パン、ご飯、おじや、お粥、麺類、熟したバナナ、缶詰の果物、チーズ、ヨーグルト、マッシュポテト、煮魚、皮のない鳥料理、卵などの繊維の少ない食べ物を食べてください。

      ・コーヒー、紅茶、お茶、アルコール類や甘い物は避けましょう。

      ・揚げた物、脂っこい物、スパイスの効いた物は、下痢を起こし刺激し腹痛を伴うことがあるので控えましょう。

      ・下痢になると体の中の水分とカリウムが失われますので、これらを十分に補う必要があります。カリウムは、バナナ、オレンジ、じゃがいも、桃に多く含まれています。

      ・下痢で失われた水分はりんごジュース、お水、お茶、肉汁、スポーツ飲料などを常温で飲んでください。炭酸飲料は少し炭酸を抜いてから飲みましょう。

      ・牛乳や乳製品は避けましょう。

      下痢がひどいときは、おなかを休めるために、流動食だけにして食事をやめた方がいいかどうか医師に聞いてみましょう。症状が改善してきたら、少しずつ繊維の少ない食べ物から食べてみましょう。

      流動食だけでは栄養分が足りないので流動食は3日以上続けないようにし、医師に相談しましょう。

      便秘

      抗がん剤治療中に便秘になる人がいます。またある人は治療中に普段よりあまり動かなくなりあまり食べないために便秘になります。もし1日、2日便が出ないときは医師に相談してください。便秘薬や浣腸が必要となるかもしれませんが、必ず医師と相談してから使ってください。

      便秘の対策はいくつかありますので試してみてください。

      ・水分を十分に摂りましょう。あたたかいのみ物は便秘を改善します。

      ・野菜類、新鮮な果物、ドライフルーツ、豆類、ポップコーン、コーンフレーク、パンなどの繊維を多く含む食べ物を摂りましょう。

      ・適度な運動を心がけましょう。

      手足のしびれ

      手足には神経がまんべんなくあります。抗がん剤治療はときどきこれらの神経に影響をおよぼし、手足のしびれなどを起こすことがあります。しびれには感覚が麻痺するような感じ、異常な感覚(ヒリヒリ感、灼熱感、など)、手足が動きにくくなるような感じ(脱力感)があります。ほかにもバランス感覚の喪失、動きがぎごちなくなりものをつかむことが困難になり、歩行困難、関節痛、筋肉痛などを起こすこともあります。

      これらの症状はあまり重症になることは少ないのですが、あまり気持ちのよいものではありません。あまりよい治療法というものはありません。抗がん剤治療をやめれば自然にもとに戻ることが多いのですが、抗がん剤治療をやめるわけにいかず、ある程度がまんしながら治療を続行して行くことが必要になることもあります。症状が強いときには医師に相談してください。

      日常生活において次のようなことに注意をしてください。

      ・手にしびれ感があるときは、熱いもの、とがったものなどをつかむときは注意をしましょう。

      ・足にしびれ感があったり、バランス感覚がなくなっていたり、筋力が低下しているときは、転ばないように注意深く歩きましょう。

      ・階段の昇り降りは手すりにつかまりましょう。

      ・浴槽には誰かと一緒に入るか、下に滑らないようにマットを敷くのもよいでしょう。

      ・滑りそうな履物は履かないようにしましょう。

      皮膚と爪への影響

      抗がん剤治療中に皮膚や爪にも多少の影響があります。例えば、発赤、痒み、皮が剥けたり、肌が乾燥したり、にきびのようなものができたりします。爪はもろくなり、さけたり、筋が入ったりします。

      次のような症状があるときの対処法を述べます。

      ・にきびのようなものができたら、顔を清潔に保ち、薬局で薬用石鹸やスキンクリームを購入し、使ってみるのもよいでしょう。

      ・痒みを伴うときは、パウダーを使うのもよいでしょう。

      ・肌が乾燥してしまうときは、長時間の熱い入浴を避けて、シャワーか体を拭く程度にするのもよいかもしれません。

      ・肌を乾燥させないために、入浴後スキンクリームやローションは役に立ちますが、香水やアルコールを含む髭剃りあとのローションは避けたほうがよいでしょう。

      ・割れた爪を保護する場合、トップコートなどを利用するとよいでしょう。

      ・皿洗い、草いじり、家のまわりの仕事をするときには手袋をするとよいでしょう。

      このようなことをしてもあまりうまくいかないときには、医師へ相談して下さい。

      抗がん剤によっては血管にそって皮膚が黒くなります。しかし一般に治療後数カ月で次第に色は元通りになります。

      抗がん剤の中には、日光にあたると、皮膚に与える影響を増強してしまうことがあります。日光から皮膚を守るため、皮膚保護のスキンローションを使ってもよいです。直接日差しにあたらないか、日差しをブロックする亜鉛化軟膏などの使用を少しずつ試してみるのもよいでしょう。

      放射線治療をすでに受けた人が抗がん剤治療中に、放射線を受けたときになった皮膚炎と同じものになることがあります。抗がん剤治療中または直後に放射線を受けた部位の皮膚全体が赤くなったり、痒くなったり、または灼熱感をおぼえたりします。これは数時間またはしばらくの間毎日のように続くこともあります。冷たいそしてぬれた湿布を試してください。痒みや灼熱感はかなりよくなるでしょう。

      抗がん剤の点滴や静脈注射をしていて点滴の部位に痛みや灼熱感を感じたら、すぐに医師か看護師に連絡してください。抗がん剤の種類によっては血管の外にもれると、皮膚に潰瘍や壊死を作ってしまうことがあり、すばやい処置が必要なときもあります。痛みや灼熱感がいつも危険なサインではありませんが、一度は必ずチェックしてもらわなければなりません。

      抗がん剤治療を受けているときに体の痒みや発疹、尋麻疹、呼吸をするときに喘息のような異常な呼吸音が生じたら、すぐに医師か看護師に報告してください。これらアレルギー性反応はしばしば治療が必要です。

      腎臓および膀胱への影響

      抗がん剤治療の薬の中には膀胱を刺激したり腎臓に一過性の障害を与えるものがあります。使用する薬が膀胱や腎臓に障害を来す可能性があるか聞いてみてもよいでしょう。

      そしてもしその可能性のある薬を使用しているときは、次のような症状に注意してください。

      ・膀胱炎(細菌性または薬剤性)の症状

      ・排尿痛または不快感

      ・頻尿

      ・排尿感を感じたら我慢できないとき

      ・色あるいは血の混じったような尿

      ・発熱、悪寒

      一般的に抗がん剤を使用しているときには水分を十分摂ることが重要ですが、特に腎臓や膀胱に影響を与えるような薬を使っているときには、水分を多く摂って尿量を多くしておくことが大切です。水分を多く摂ることは、いろいろな不快な腎臓や膀胱の障害を予防するのによいでしょう。水、お茶、麦茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ジュース、スープ、アイスクリームなど何でもよいでしょう。

      抗がん剤治療の薬の中には、時に尿の色がオレンジや赤、黄色になったりすることがあります。また変な臭いがするときもあります。心配ないのですが、気になるようなら医師と相談してください。

      風邪のような症状

      抗がん剤治療後数日または数時間の間にあたかも風邪をひいたような症状にみまわれるときがあります。風邪様症状(頭痛、筋肉痛、易疲労感、悪寒、微熱、吐き気、そして食欲不振など)が23日続くことがあります。これらの症状は抗がん剤治療ではなくて、感染や腫瘍そのものによっても生じることがあります。医師に報告して治療を決めてもらってください。

      むくみ

      抗がん剤治療中に体のむくみが出ることがあります。これは薬によるときと治療によるホルモンの変化、または腫瘍による場合があります。顔、手、足、おなかにむくみを感じたら医師か看護師に相談してください。塩分の多い食品や塩分摂取を控えるようにしてください。ひどいときは医師に相談して、むくみを取る薬を使ってみてください。

      性生活への影響

      抗がん剤治療は男女の性殖器官に何らかの影響を与えるかもしれません。いつも起きるわけではありませんが、使われる薬、あなたの年齢、そして全身の健康状態に影響されます。

      男性に対しては抗がん剤治療は精子の数を減らし、その運動性を低めたり、その他の異常を起こしたりします。男性の不妊の原因になるかもしれませんが性生活は可能です。将来妊娠不可能な場合も出てきます。治療の前によく医師と相談してください。なお精子の凍結保存などを相談することもできます。抗がん剤治療中は抗がん剤の染色体への影響のために避妊が必要です。このこともよく話し合ってください。

      女性に対しては抗がん剤治療の薬は卵巣に障害を与え、ホルモン産生を低下させる可能性があります。抗がん剤治療中、月経周期の乱れや一時的に無月経になることがあります。不妊症になることもあります。一時的なときと生涯妊娠不可能になるときもあります。不妊の起きる要素は抗がん剤治療の薬の期間、薬のタイプ、薬の量、そしてあなたの年齢などによります。

      一方で、妊娠は抗がん剤治療中可能かもしれませんが、薬の胎児への影響を考えるとやはり避けるべきでしょう。妊娠可能年齢の女性は治療中避妊をすべきです。

      腫瘍が見つかったとき、もしあなたが妊娠していたら、分娩まで抗がん剤治療を待つこともあります。もしすぐに治療を必要なときは、治療は妊娠12週を過ぎて、比較的胎児への影響がなくなる頃から開始します。しかし場合によっては人工中絶も考えなくてはなりません。

      薬のホルモンへの影響は時に更年期症状を起こすことがあります。ほてり、腟のかゆみ、灼熱感、乾燥感などです。これらの変化は、性生活を不快にしますが、ペニスの挿入をなめらかにするゼリーを使うとかなり改善されます。

      これらの症状はまた感染も起こしやすくします。感染を防ぐために通気性のいい綿の下着を使用し、体にぴったりしたスラックスなどはなるべく避けるようにしましよう。医師と相談して外陰部の軟膏や腟錠使用もよいでしょう。もし感染の徴候(黄色のおりもの、量が多い、痒みがある)があれば、すぐに医師と相談して治療を開始してください。抗がん剤治療中の感染はすぐに治療をするのが安全です。

      性生活について

      セックスに関しては抗がん剤治療を受ける人々によって違いがあります。ある人は治療中今まで以上に相手(妻または夫)を密接に感じセックスを求める気持ちが強くなります。またある人は今までどおりですが、そのほかの人は治療から受ける身体的および肉体的ストレスのために性欲は減退します。ストレスは健康に対する不安、家庭、疲れやすさ、ホルモンの変化、副作用そして治療費などによるものです。

      また相手(妻または夫)の不安や心配もまたセックスに影響します。たとえばある人はセックスで相手の病状を悪化させると思いこんでいるし、またセックスで相手の腫瘍がうつりはしないかとか、相手と同じように薬の影響を受けるのではないかとか誤解されていることがあります。誤解をときセックスについて医師や看護師と相談してみてください。

      あなたは相手と病気とセックスについて十分話し合うべきです。もし話し合うことが難しいときは、ほかにカウンセラーや相談相手を見つけて、十分話し合うべきです。医師や心療内科の先生とも相談してみるのもよいでしょう。

      治療前にセックスの喜びを感じたことのある人は、抗がん剤治療中にセックスに同じ感覚をもてるでしょう。しかし性的喜びの方法はさまざまで、抱き合うこと、互いにふれあうこと、ベットを共にすることなどがあります。セックスが少なくなるとき、これらはとくに重要です。治療前にあった愛情はすべてそのままのはずです。性的表現にきまりはありません。お二人でよく話し合いましょう。

      第4章 食生活

      がん患者さんのなかには食事を十分に摂取していても体重減少が見られることがあります。これはがんによる直接的な影響や治療による二次的な影響があります。 体重減少を示したがん患者さんでは、化学療法などに対する反応性の低下、生活の質(QOL)の低下、生存率の低下などが報告されており、しっかりと栄養を摂ることで治療効果、予後や QOL を向上させることに結びつきます。

      抗がん剤治療を受けるときには、バランスよく栄養が摂れていると治療をスムーズに受けられることにも繋がります。また抗がん剤によって臓器が障害を受けた場合は再生を促し、感染に対する抵抗力もつきます。

      バランス良く食べるということは、炭水化物(米、パン、麺類)、蛋白質(肉、魚、卵、大豆製品)、脂質、ビタミン、ミネラルをまんべんなく摂ることです。

      炭水化物は、体のエネルギーになります。蛋白質は体を作るのに必要で、抗がん剤によって皮膚、毛、筋肉など障害を受けた臓器を再生するために意識して摂りましょう。

      抗がん剤治療の時には食欲が低下し、食べたくても食べられなくなることがあります。そのような時は3食決まった時間に食べようと、無理をする必要はありません。食べられる時に少しずつこまめに食べることを心がけてください。

      治療による副作用として食欲不振や味覚異常、嗅覚異常、嘔気、嘔吐、口内炎、口内乾燥、咀嚼・嚥下 障害、下痢、便秘、発熱などが出現することがあります。その時のポイントをいくつか紹介します。

      ①悪心・嘔吐のある時は少量ずつ頻回に分けて食べる、臭いを軽減するために冷ましてから食べるなど調整しましょう。

      ②味覚の変化がある時は、天然のだしを効かせる、レモン・すだち・ゆず等の酸味を利用する、味にアクセントをつける(ごま・香辛料・香味野菜 など)、症状に合わせて調味料(塩・醤油・砂糖)を調整するなど。亜鉛が不足すると味覚障害の原因になると言われています。 亜鉛は、魚介類、肉類、豆類、野菜、海草、種実類 などに多く含まれているので、亜鉛が低下していると言われたら意識してこれらを摂取しましょう。

      ③下痢がある時は、水分は水やお茶だけでなく、電解質を含むスポーツ飲料も取り入れ常温に近いものを少量ずつ頻回に飲むことをお勧めします。牛乳や柑橘系のジュースは控えましょう。また、脂肪分が多いことで下痢を生じてしまう場合もあるので、低脂肪でタンパク質が豊富な食材を選びましょう。 香辛料・アルコール・炭酸飲料・カフェインの刺激物は控えましょう。

      ④便秘がある時は食物繊維を多く含む食品を摂り、こまめな水分補給を心掛けましょう。 また高脂肪の食品を控え、ヨーグルトや乳酸菌を含む食品を摂りましょう。ただし、薬によっては乳酸菌を控えた方が良いこともあるので医師へ確認しましょう。

      腸内環境を整え腸内細菌の働きを良くすると、免疫細胞が活性化して免疫力が高まります。そのための食生活で意識したいのは、“プロ”バイオティクス(ヨーグルト・納豆・キムチ・みそ・チーズ・ぬか漬け・酢などの発酵食品)と、“プレ”バイオティクス(バナナ・アスパラガス・カボチャ・キャベツ・山芋・納豆・海藻、キノコ類などの水溶性食物繊維、オリゴ糖)食品を組み合わせて食べることです。この二つの相乗効果で、感染症を引き起こす可能性のある菌が腸内で異常増殖するのを抑える、腸内細菌が生体内に侵入するのを防ぐ作用や炎症抑制などがあると言われています。また、魚油に多く含まれるEPADHAには、抗炎症作用が認められています。青魚やブリ、マグロのトロなどに多く含まれています。

      がんに対する抗酸化や抗炎症を期待できる栄養素として、ビタミンA(緑黄色野菜、豚肉、卵等)・ビタミンD(きのこ、魚類、卵等)なども重要だと考えられています。

      どうしても普段の食事だけでは栄養が摂れない場合もあります。その時はエネルギーやたんぱく質が強化されている栄養補助食品なども上手に活用しましょう。昨今、多種多様なサプリメントがあります。使用する場合は医師へ相談してください。

      食べることで、がんに負けない体の維持に繋がります。食事のことでお悩みがあればぜひ当院管理栄養士へご相談ください。

      第5章 医療費

      抗がん剤治療を含め、がんの治療費は基本的に健康保険適応ですが、健康保険適応外の治療は自費で支払うことになります。また個室など差額室料がかかる部屋に入院したときや、衛生材料費・病衣などのリース料、おむつ代なども自費です。これらは公的な補助の対象にはなりません。医療費や食費は保険でカバーされますが、その他の保険外負担がかかることが多いため、総額では高額になります。そのためにがんの治療に関して医療費の補助を受けるさまざまな制度があります。

      限度額認定証

      事前に申請し「限度額適用認定証」を交付してもらい、それを病院へ提出すると病院での支払いは、高額療養費の自己負担限度額となります。

      入院では、上記のような「高額医療費(療養費)貸付制度」や「高額療養費委任払い制度」が利用出来ない場合が多いので、事前に「限度額適用認定証」を交付してもらう事をお勧めします。70歳以上でも収入によっては、限度額認定証の申請をした方が窓口での負担が少なくなる場合があります。

      詳しくはご加入の保険者担当窓口にお問合わせください。

      高額療養費

      高い医療費による経済的負担を軽くするために、病院窓口でのお支払額(医療費の一部負担額)が自己負担限度額を超えた場合に、 その超えた分の払い戻しを受けられるのが高額療養費です。

      高額療養費の計算方法にはルールがあり、自己負担限度額とは年齢や所得などによって計算方法が違います。加入の医療保険によっては条件等が異なる場合がありますので、詳しくは加入の医療保険窓口(お手持ちの保険証の連絡先)へお問い合わせください。

      高額療養費の申請は国民健康保険の場合には市区町村の担当窓口、それ以外はそれぞれの加入先になります。支払額が決定となるには、病院等の診療報酬請求書を審査したうえで決定されますので、約2カ月~6カ月余り後になります。

      [申請に必要なもの]印鑑・保険証・医療機関の領収書・振込先口座・払戻金申請に関する保険者からの通知

      もし医療費についてわからないことがありましたら、当院におかかりの方はオンコロジーセンターの受付までお問い合わせください。詳しい説明が必要な場合には医療ソーシャルワーカーから時間を設けてお話しします。

      第6章 抗がん剤治療を始める前に

      今までの章で抗がん剤治療についてご理解いただけたことと思います。抗がん剤治療を受ける前にいくつかのことを医師や看護師に聞いておく必要があります。それは今までの抗がん剤治療のお話しが、あなたに使用する抗がん剤にすべてあてはまるわけではありませんし、ここに書いていないことも起こり得るからです。またもう一つ大切なことは、あなたと医師がよい関係を持っているということです。

      抗がん剤治療を受ける前に十分に説明を聞いて、もしわからないことがあれば質問をしておきましょう。抗がん剤治療を受ける場合に知っておくことが望ましい事項は以下のとおりです。これらは絶対に知っておかなくてはいけないということではありません。信頼できる医師が治療を担当していると、その医師にすべて任せきりというのも日本的で悪くはないかもしれません。また、あなたが聞きたくないこともあるかもしれません。しかし、あなたのご家族やお友達には知っておいてもらってもよいことでしょう。

      ・抗がん剤治療でどういう効果が期待できるか

      ・どの薬をどのように使うのか

      ・入院でするのか、外来でするのか

      ・治療の終了の予定はいつか

      ・行なおうとしている抗がん剤治療に以外に方法はないのか

      ・この治療法での副作用は何か

      ・そのときの対策はあるのか

      質問は躊躇してはいけません。恥ずかしいと思ってもいけません。医師に対して自分が悪く思われるのではないか、などと思ってもいけません。あなたの命がかかっているのです。

      質問はできるだけメモをしておくほうがよいでしょう。メモをすると質問をするときに忘れないようにしておくだけでなく、質問をまとめているときに新たな質問が湧いてくることもあります。治療について説明を受けるときや質問をするときには、ご家族やお友達と一緒にいるときがよいでしょう。

      あなた一人が腫瘍(がん)に立ち向かうのではありません。あなたのご家族やお友達、医療スタッフを含め、みんなでこの腫瘍(がん)に挑戦しようではありませんか。

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